防音室の情報源
外国との間の定期便が1便しかないという「足」の問題は、内外の旅行業者とタイアップしたチャーター便利用ツアーの試みや、近県の空港からの小型機チャーターによる移動など、工夫次第で何とかなるはずだ。
多少ツアーの料金が高くなっても、それに見合う観光資源を秋田県がきちんと提供することができるのであれば、問題はない。
そうなれば、経済成長の結果、いまやカネ回りが大変よくなっているアジア各国などの観光客は、喜んでそうした料金を負担して、秋田県の経済を潤してくれるだろう。
以前、「週刊エコノミスト」2008〜9月陥日号の特集「なるか観光ビッグバン」を読んでいたら、秋田県など各地方自治体が海外から観光客を呼び込む上でのヒントになる話が、いくつも出ていた。
例えば、国土交通省を中心に進められている外国人の訪日促進活動「Y0K0S0‐・JAPA7」の大使で、中国人作家の毛丹青氏の指摘。
毛氏は長野県の温泉に行った際に、女将さんから「ここは有名な日本映画の舞台になった場所だ」と聞かされて、きちんと確認もせずにブログに書いた。
すると、中国でそれが大きな反響を呼び、その温泉に行くツアーまで計画されたという。
毛氏は、「このことが意味するのは、日本には「文化」という目に見えない観光資源がたくさんあるということだ。
「何々に縁がある地」といっただけで、外国人は日本へ行ってみたくなる。
それは日本の強みなのだ」と述べている。
また、やはり「Y0K0S0・JAPAN」大使で韓国人の李容淑さんは、こんなコメントをしている。
「地方に講演に行くと、自分たちの地域には観光資源がないと嘆く声を耳にする。
だが、例えば日本の火葬場は韓国人にとって立派な観光資源となりうる。
韓国は古くから土葬だが、昨今は土地不足などで火葬が注目され、日本の火葬場へ見学に来ている。
また、日本は他国に先駆けて高齢化社会を迎えているが、日本に遅れて高齢化社会を迎える国々にとって、日本の老人ホームなどはとても興味のある観光資源なのだ」火葬場や老人ホームも観光資源になる…。
高齢化で日本全体の19年先を走っている秋田県にとって、まさにうってつけの話ではなかろうか。
これに少し関連した体験談だが、筆者は観光客として、海外で有名人の葬儀の最終場面を目撃した経験がある。
まだソビエト連邦が存在した時代、1989年7月にモスクワを訪れた時のことだ。
筆者は、スターリン批判やキューバ危機で歴史に名を残したフルシチョフ第一書記の墓があるノボデビッチ修道院に足を運んだ。
すると、警備の警官が交通規制をしていて、墓地に入れない。
周りの人に聞くと、どうやら戦後長くソ連外相を務めたグロムイコ氏の葬儀が行われるのだという。
せっかくの機会なので小雨の中を3時間ほど根気強く待ったところ、葬儀の行列が赤い棺を運んできた。
歴史の一幕に立ち会うことができたわけで、大学で現代史を専攻した筆者としては、貴重な経験ができたと非常に感慨深いものがあった。
秋田県の観光資源に話を戻そう。
2007年、秋田県では「わか杉国体」が開催された。
そのマスコットキャラクターは、杉をモチーフにした「スギッチ」だった。
杉と言うと、東京など都会では「花粉症の原因」としてよいイメージを持たれにくいが、建築資材として優れているほか、針葉樹なので生育が早く、地球温暖化対策にも役に立つ。
秋田の「県の木」は秋田杉で、県内の天然杉は日本三大美林の一つに数えられている。
秋田の山々に生えている杉林は、時間によって色合いが変化するなど、実に美しい。
また、秋田県は前述したように、農家人口比率が84・4%で全国トップ。
水田率は56・7%で第6位(2007年7月現在)。
秋田に多い、たわわに実った稲穂が夕陽を浴びて一面に黄金色に輝くざまを見て、筆者は感動のあまり声が出なかったことがある。
美しい杉林に輝く稲穂。
観光資源として温泉やかまくらにも劣らず魅力的なそれらの要素を、外国人にどう強くアピールしていくか。
秋田県人の実践的な知恵が試される。
知恵と言えば、秋田県は先に「お国自慢系」のデータで示したように、「子供の勉強」という面で非常に優れている。
2007年度の小学6年生を対象にした全国学力テストで、秋田県は国語A、国語B、算数A、算数Bの4科目のいずれにおいても、正答率が全国で最も高かった。
さらに、20年度も4科目のトップを維持し、連覇を達成した。
また、中学3年生対象のテストでも、20年度は国語Aがトップを獲得したほか、残り3科目も3位以内だった。
全国で最高学力の「日本のフィンランド」。
そんな秋田県は、世界で最も学力が高い国とされるフィンランドになぞらえて、「日本のフィンランド」と呼ばれることもある。
2008年春には、ある大手進学塾が首都圏のJR電車内に「秋田に学べ。
」というキャッチコピーの広告を出して、話題になった。
ところが判年あまり前のテストでは、実は秋田県は全国最下位だった。
その同じ地域の児童の学力が、いまや他県を圧倒しているのは、なぜだろうか。
「経済格差は教育格差につながる」という説をただ単純に延長すれば、秋田県の学力は他県より低くなりそうなものである。
2005年度「県民経済計算」を見ると、秋田県の県民所得は47都道府県の中で第22位。
1人当たり県民所得は229万5000円で、第狐位という低さである。
だが、子供の学力レベルではまったく逆。
どうやら、秋田県の学力面での強さには、経済とは別の理由があると考えられる。
2008年の「学力テスト連覇」を報じた新聞各紙で、秋田県教育委員会がこんな説明をしている。
秋田県では学校が地域の拠点として根付き、「地域・家庭・学校の連携」がよい意味での相乗効果を発揮しており、それが学力の向上に結びついているというのだ。
価年度からは、保護者や地域住民が自由に学校を訪問できる「みんなの登校日」が実施され、W年には県民の4分の1にあたる延べ31万人が訪れたという。
また、2001年度から小・小2と中の学級規模を標準別人にする「少人数学級」を導入したことも効果が大きかったようだ。
きめ細かな教育指導ができるようになったからである。
統計によると、児童生徒の数が減少している割に先生の数は減っておらず、結果として、先生人当たりが指導する児童生徒の数が少なくなっている。
これが功を奏しさらに、習熟度別授業の取り入れや、2002年度から実施している県独自の学力テスト、優秀な「スーパーティーチャー」を複数校に兼務させてその指導技術を浸透させる取り組み、都市部と農村部の県内格差の少なさといった要因も、秋田県の好成績につながっているようである。
「学級崩壊など授業の不成立がない」という学者の指摘も新聞で紹介されていた。
だが、それらの理由だけではあるまいと筆者は考える。
秋田県には「遊ぶところ」、すなわち繁華街が少ないという事情も、児童生徒が十分な勉強時間を確保できていることに、案外結びついているのではないか。
例えば、秋田市の中心部でも、映画館が潰れたりしているほか、そもそも繁華街と呼べる面積が非常に小さい。
やや脱線するが、友人が面白いことを教えてくれた。
秋田駅からデパートとスーパーに挟まれたアーケードを歩いていくと、すぐに道路に遮られる。
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